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書庫的ななにか

Archive2013年07月 1/1

真夏のディアキネシス 4

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   真夏のディアキネシス  第四話 テレスコープ  0 これが検査の一部なんて絶対にうそだ、と柳瀬景文は思う。 しかし医者の前田明日風は、ベッドの端に腰を下ろした景文の前に座り、うすいビニール手袋をつけ、その行為をやめる気配も見せなかった。「あ、あの! これは、そそそその」「検査の一部よ、歴とした」「い、いやでもその――け、血液検査とかならわかりますけど、こ、これは」「血液検査と同じようなものよ。...

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真夏のディアキネシス 3

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   真夏のディアキネシス   第三話 スケープゴート  0 天井の照明をつけないかぎり、その部屋は常に暗かった。 部屋に窓はない。あったとしても、窓の向こうには押し固められたような地面があるだけで、太陽の光もさすがに地の底までは差し込んでこない。 暗く、空調のせいでひんやりした室内にいると、ここは地下なのだと強烈に実感する。 柳瀬景文は自分に与えられたその部屋を、まだ自分の部屋だとは感じられなか...

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真夏のディアキネシス 2

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   真夏のディアキネシス  第二話 エクスフォース  0 父と母は、厳しい軍服を着た若い女を宇宙人でも見るように何度もまばたきをしながら眺めていた。 ほかでもないわが家で、両親がいて、要するに自分の城のなかに招き入れたようなものなのに、この場を支配しているのは紛れもなく伊東美穂だ。柳瀬景文はそれをすこし情けなく思いながら成り行きを見守っている。「――ですが、どうしてうちの息子が?」 父は、母が入れ...

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 ぼくたちは茫洋の海を進む。 不安の霧が立ち込め、帆は穴だらけでも、 ため息を受けて凪の海を進む。 永遠に続く海の果てから鋭く突き刺す光が、 霧に拡散してやわらかく滲む。 波音をギターでかき消して、 悲鳴を歌声で押し殺したら、 どこまでも進める気がするんだ。 andymoriの「宇宙の果てはこの目の前に」、すばらしいアルバムでした。...

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真夏のディアキネシス 1

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   真夏のディアキネシス  第一話 昨日にさよなら  0 なにからなにまで幻のようだと思いながら柳瀬景文は少女を見上げていた。 めちゃくちゃに壊された保健室。 コンクリートの壁は清々しいくらいの大穴を開けられ、リノリウムの床に鉄筋が骨のように突き出したコンクリート片がごろごろと転がり、ベッドは反対側の壁まで吹き飛ばされ、いろいろな薬品が入っていた棚はひしゃげて跡形もない。 ただ、それはすべて破壊...

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