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書庫的ななにか

Archive2013年08月 1/1

真夏のディアキネシス 8

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   真夏のディアキネシス  第八話 覚醒  1 人間、変われば変わるものだと柳瀬景文は思ったが、もしかしたら変わったのではなく本心が現れただけかもしれないと気づくと、どうやらそのほうが真実に近いようだった。 あの日――景文が〈ゴースト〉の内部に囚われる、という事件があった日から、兎山鈴架と百木瑠璃の関係は明らかに変わった。 ま、鈴架のほうはとくに変わらない、相変わらず忠実で好奇心旺盛な子犬のような...

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真夏のディアキネシス 7

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   真夏のディアキネシス  第七話 アンデッドフィロソフィー  0 そこにはなにもなかった。 光も、音も、匂いも、上下もなかった。 自分が立っているのか寝そべっているのか逆さなのかもわからない。 まるで死んだ体のなかに意識だけが取り残されてしまったようだ。柳瀬景文はそう思う。思うことで自分はまだ存在しているのだとたしかめられる。なにも考えずにいると、ほんとうに自分が溶け出し、周囲の空間と一体化し...

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真夏のディアキネシス 6

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   真夏のディアキネシス  第六話 クレセントムーンライト  0 流れる風には緑の匂いが混ざっている。「自然は好きか?」「は?」「自然だよ。土、緑、太陽。そういうものが好きかと聞いたんだ」「はあ――コンクリートばかりでは気が滅入りますから、たまには自然もいいとは思いますが」 助手席の窓から顔を出した小野寺嗣生は甲高く笑った。「常に自然のなかで生きたいとは思わない、か。ま、そうだろうな。そういう人間...

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なにかにつけて

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 真夏である。 とにかく毎日暑く、今年は去年までとは桁違いに暑いと毎年思っている気がする。 つまり来年は今年よりも暑いわけであり、いまから憂鬱で仕方ない。 冬には冬の憂鬱があり、夏には夏の憂鬱がある。 冬の憂鬱は個人的に寒さよりウイルスだが、夏の憂鬱は暑さによる集中力の低下である。 子どものころ「夏休みの勉強は朝のうちにやってしまいましょう」と言われていたのがいまになって身に染みる。涼しいうちにや...

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真夏のディアキネシス 5

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   真夏のディアキネシス  第五話 フェノメノンの花束  0 敵を、〈ゴースト〉を怖いと思ったことは一度もなかった。 〈ゴースト〉は、怖いと思うにはあまりに常識離れしていた。言ってみれば子ども向けの物語に出てくる怪獣のようなもので、直接的に恐ろしい、怖い、と思うには存在が違いすぎる。 百木瑠璃にとって〈ゴースト〉は倒せと命じられた相手でしかなかった。 それがどんな存在なのか、どこからやってきてど...

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