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書庫的ななにか

Archive2016年10月 1/1

ネバーランド・ミュージカ 第四話

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   ネバーランド・ミュージカ  0 あるオーケストラの入団試験に、面接があった。 面接官はオーケストラを率いる指揮者やマネージャー、それにコンマスで、横一列になった面接官の前に立ち、いくつか質問を受けるだけの簡単な面接だ。 質問の内容も。なにかを見極めようとしているというより、インタビューのような雰囲気だった。 あなたは何歳ごろから音楽をはじめましたか。 いままで習った楽器はいくつありますか。 ...

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ネバーランド・ミュージカ 第三話

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   ネバーランド・ミュージカ  0 ――当機は着陸体勢に入ります。お席に戻り、シートベルトをお締めください。 複数の言語で繰り返される注意を聞きながら、少女は不機嫌そうに窓の外を見ていた。 角が丸い四角に切り取られた異国の風景。 ずっと青い海か白い雲が続いていたが、ようやく陸地が見えはじめている。 はるか上空からでも湾を中心に町が広がっているのが見えたが、町の外は山で、町が緑を駆逐しようとしている...

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ネバーランド・ミュージカ 第二話

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   ネバーランド・ミュージカ  0 夢を、見ていた。 楽しくない、怖い夢。 温かくない、悲しい夢。 目が覚めたときには内容なんてすっかり忘れてしまっているけど、夢のなかの感情だけは覚えていて、それで怖い夢だったとか、悲しい夢だったとか、そんなふうに推測する。 大抵夢というのは荒唐無稽らしい。 ばかばかしくて、リアリティがなくて。 ただ、なぜだかわからないけど怖かったり、悲しかったりする。 しかも...

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やんでるっ 閑話5

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   やんでるっ  閑話 5 種を蒔くひと ごうごうと風が鳴り、うんうんとモーターがうなっている。 大上幸人は鏡に映った自分の姿、パンツ一枚でドライヤーを当てている姿を見て、すこし太ったかな、と考える。 なんとなく、腹回りがたくましくなったような。 最近飯がうまいものな、夏休みに入る前からろくに運動などしていないし。 脇腹の肉をつまみながら、すこし運動でもしようか、と考える。 ひとりでするのは寂し...

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やんでるっ 閑話4

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   やんでるっ  閑話 4 遠い空、いまそこにある世界 すこしずつ空が遠くなっていく。 見えなくなっていく。 日が暮れているのだ。 秋になって、すっかり日が暮れるのも早くなった。 緩やかな青と濃紺のグラデーション、ちょうど頭上の空で混ざり合い、溶け合って、なめらかな一枚の空になっている。 手すりもない屋上で、その縁のぎりぎりにつま先を合わせて立つ和泉英子は、見るともなしに空の傾きを見ていた。 風...

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やんでるっ 閑話3

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   やんでるっ  閑話 3 サマーデイズ・メモリアル 暑い夏のことだ。 蝉はみんみんと鳴いている。 えらいもので、梅雨が終わると同時に、蝉たちは鳴きはじめた。 気温ではなく、ほかのなにかで季節を見計らっているのかもしれない、と考える。 梅雨のあとは、蝉しぐれ。 なかなか風流といえば風流だ。 それでも、いつかの時代の、教科書に出てくるなんとかという茶人からすれば、いまの時代はあまりに簡素で、侘び寂...

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やんでるっ 閑話2

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   やんでるっ  閑話 2 追憶の夕暮れ 夏休みを直前に控えたある日の昼休みである。 その日は暑かった。 網膜を焼くような日差しにしても、むっと鼻先や喉の奥に絡みつく熱気にしても、すっかり真夏の気候である。 ご丁寧に、蝉も鳴いている。 窓を閉め切っていても、その絶唱はわずかに聞こえてきて、夏がはじまったのだ、という気がしてくる。 同時にそれは季節がひとつめぐったのだということでもあり、夏もあっと...

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やんでるっ 7

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   やんでるっ  7 終末の調べ  7-1 跫音 暗い路地を、会話もなく並んで歩く。 街灯もほとんどないような、住宅街の細い路地だ。 アスファルトに、英子の下駄がからからと鳴る。 音といえばそれくらいのもので、あとはどこか遠くで虫が鳴いているのがかすかに聞こえてくる。 どうしたものかな、と幸人はめずらしく言葉に詰まった。 普段のように冗談で済ませるには、あまりに重たい、ぎこちない空気だ。 かといっ...

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やんでるっ 6

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   やんでるっ  6 花火とあなたの横顔と口づけと  6-1 風車の待ちぼうけ なんにしても、だ。 一日中部屋のなかでごろごろと寝転がり、猫と遊んで過ごすのは精神衛生上決してよいことではない、とわかっている。 でも、と和泉英子は思う、ほかになにもやることはないし、やる気にもなれないし。 寝返りを打つと、ベッドがかすかに軋む。 結局、こうやって過ごすしかないのだ。 なにもせず、ベッドに寝そべって、こ...

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やんでるっ 5

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   やんでるっ  5 夏だ海辺だ水着美女だ!  5-1 お金より情熱だろう 夏休みが楽しいのは盆までだ、という気がする。 とくに七月中は、文句なしに楽しい。 毎日がパラダイスといってもいい。 昼間から家でごろごろしていたり、やたらと子どもが多い町に繰り出してみたり、ゲームをするのも漫画を読むのも自由で、おれは何時間ゲームをし続けられるのか、という意味のない耐久レースをはじめたくなるくらいの楽園だ。...

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やんでるっ 4

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   やんでるっ  4 子猫と雌猫  4-1 エマージェンシーコール「彼」は身軽だ。 自分の身長の何倍もある壁も、悠々飛び越えていく。 フェンスにしがみつき、がちゃがちゃと鳴らしながら乗り越えて、土の地面に立つ。 そのままふらふらと歩いて進む。 もとよりあてはない。 放浪の旅だ。 自分は、どこへもたどり着けず命を落とすかもしれない、と彼は思う。 しかし、それでもいい。 いや、それでも行くしかない、と...

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やんでるっ 3

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   やんでるっ  3 童心の日  3-1 遊びをはじめよう じりじりと世界を焼き尽くすような陽光だ。 風はなく、熱気はいつまでもそこに留まり、さらに加熱されては上昇気流となって空へ消えていく。 蝉が鳴き、子どもが騒ぐ。 それ以外は静かだ。 気温という概念がない世界に生きている子ども以外は、だれもこんな日に出歩きたくはない。 外は灼熱だ。サハラ砂漠もまっ青な東京砂漠というやつだ。東京でも、ここは北西...

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やんでるっ 2

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   やんでるっ  2 嵐の夜  2-1 花畑の幻影 テレビのなか、まるでこの世の終わりを告げるように厳かで、吹き出したくなるほど真剣に、アナウンサーが告げている。「昨夜本州に上陸した台風四号は、現在勢力を弱めながら徐々に北東へ進んでいます。ただいま画面に表示されております地域では強風や大雨、河川の増水や土砂崩れに注意が必要です。台風はこのまま勢力を弱め、今夜遅くに温帯低気圧へ変わる見込みです」 テ...

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やんでるっ 1

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   やんでるっ  1 第一次接近遭遇  1-1 地獄への招待状 校舎一階の隅に、生徒たちから、ロウ、と呼ばれている部屋がある。 牢、という漢字を当てる。 なるほどな、と大上幸人は思う。 たしかに、牢屋、牢獄にふさわしい部屋である。 八畳ほどの、ご丁寧にも窓のない部屋だ。 その部屋にあるものといえば、一組の机と椅子。 入り口の扉に近いほうにひとつ、机を挟んで対面にもうひとつ椅子があって、さながら取調...

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やんでるっ 0

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   やんでるっ  0 たとえばこんな日常で  0-1 目覚めは命がけ かちゃり、とわずかな金属音が鳴って、扉が薄く開いた。 ほの暗い室内である。 というのも、窓には遮光カーテンがかかり、燦々たる朝の陽光を、あるいはみんみんたる蝉の絶唱を遮って、ただわずかに冷房がちいさな唸り声を上げている。 簡素といえば簡素だが、だらしないといえばだらしない室内。 ベッドと机しかない部屋だが、あちこちに脱ぎ散らかし...

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秋のはじまり

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 先月夏の終わりと書いたわりにまだまだ暑い日が続いておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。藤崎です。 ぼくは結構元気にもりもりやっております。  * だいたい九月に入ると「残暑」になると思うのですが、十月に入っても暑いのはなんというのでしょうか。 残暑がさらに残る、という意味で「残残暑」とでもいうのか、むしろ「残暑残」とはさむ感じでいくのか。前者の場合読み方は「ざんざんしょ」だと思いますが...

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